Apple IIのカセットテープが出てきた。ソフトがテープで売られていた時代の話
こんにちは。
先日買い取らせていただいた古いApple一式を整理していたら、小さな箱の底からカセットテープが9本出てきました。

音楽のテープではありません。これがソフトウェアです。
今の感覚だと意味がわからないと思うので、順番に説明させてください。
Apple IIの記憶装置は、カセットテープだった
1977年に登場したApple II。発売当初、プログラムを保存したり読み込んだりする手段はカセットテープでした。
本体の背面にカセット入出力の端子があって、そこにごく普通のラジカセをつなぎます。テープを再生すると「ピー……ガガガガ」という音が流れ、それをApple IIが受け取ってプログラムに戻す。保存するときは逆に、本体から出た音をテープに録音します。
つまり音でデータをやり取りしていたわけです。
フロッピーディスクドライブ(Disk II)が出るのは1978年。それまでは、これが唯一の手段でした。
「LOAD 16K」という表記の意味

ラベルの右側に「LOAD 16K」と書かれています。
これは「このソフトを動かすには16KBのメモリが要りますよ」という意味です。
16KB。ギガでもメガでもなく、キロです。いま私がこの原稿を書いているブラウザのタブ1枚が、その数万倍のメモリを食っています。
当時のApple IIは4KBからスタートして、16KB積んでいれば立派なもの、という世界でした。だから「16K」と大きく書いておく必要があった。メモリが足りなければ、テープを回しても動かないわけですから。
出てきた9本を、一本ずつ
ラベルを読んでいくと、見事に1979年のApple Computerが並んでいました。
Little Brick Out(600-2023-00)
ブロック崩しです。Apple IIの定番中の定番。
スティーブ・ウォズニアックがAtari時代に手がけた「Breakout」を、自分で作ったApple IIのBASICで書き直してみせた——という逸話で知られるソフトです。ハードを作った本人が、そのハードでゲームを書いて見せる。今考えるとすごい時代です。
Brian’s Theme(600-2027-00)

ラベルの右上に、ピンクの値札シールの剥がし跡が残っています。
誰かがお店で買って、家に持って帰って、シールを剥がした。その痕跡が47年残っている。こういうのに弱いんです、私。
Hopalong Cassidy(600-2026-00)

ホパロング・キャシディは、アメリカの西部劇のヒーローです。白い帽子をかぶったカウボーイ。
1979年のApple Computerが、なぜ西部劇のタイトルを使ったのか。カリフォルニアのガレージから始まった会社が、西部開拓のイメージを重ねていたのだとしたら——いや、さすがに考えすぎですね。
Finance I(600-2025-00)
金融計算のソフトです。ローンの返済額を出したりするもの。
ゲームと並んで「お金の計算」が入っているあたりに、パソコンが趣味の機械から実用品に移ろうとしていた瞬間が見えます。
Alignment Test Tone(600-2024-00)
そして、個人的にいちばん刺さったのがこれです。
「アライメント・テスト・トーン」。訳すとヘッド調整用の基準音です。
カセットテープは、再生ヘッドの角度がほんの少しズレるだけで高い音が出なくなります。音楽なら「ちょっとこもってるな」で済みますが、データだと読めません。
そこでこのテープを再生して、音を聞きながらラジカセのヘッドをドライバーで微調整する。そうやって、ようやくソフトが読める状態を作る。
つまりAppleは、「どうせうまく読めないことがあるでしょう」と最初からわかっていて、調整用のテープを一緒に売っていたわけです。
これ、裏を返せば「テープが読めない」が日常茶飯事だったということです。5分かけてロードして、最後の最後でエラー。もう一回巻き戻して、音量をちょっと変えて、また5分。
……当時の人、よく耐えたなと思います。
そして1984年、テープの役割が変わる
残りの数本は、見た目からして毛色が違いました。
「A Guided Tour of Macintosh」027-0013A ©1984 Apple Computer, Inc.
そう、初代Macintoshの登場です。
ただしこのテープ、中身はプログラムではありません。人の声です。
初代Macには「A Guided Tour」というフロッピーディスクが付属していて、それと一緒にこのカセットを再生します。すると、ナレーターが語りかけてくるわけです。「さあ、マウスを持ってください」「画面の左上をご覧ください」と。
1984年には、まだ誰もマウスを握ったことがなかった。だからAppleは、声で手取り足取り教える必要があった。
わずか5年で、カセットテープは「記憶装置」から「先生」に転職したことになります。
BGMはWindham Hill
さらに、MacWrite・MacPaint版のテープにはこう書かれています。
Music and soundrecording licensed by Windham Hill Records ©1979, 1982, 1983 Windham Hill Productions, Inc.
Windham Hill。ジョージ・ウィンストンなどで知られる、アコースティック系のレーベルです。
操作説明のテープに、わざわざ外部レーベルの音楽をライセンスして入れている。「使い方の説明」を、ただの説明で終わらせない。この頃からAppleはAppleだったんだなと思わされます。
ちなみに、この中には日本語のラベルが貼られたものも混ざっていました。日本語版も作られていたということです。
ソフトは消える。テープは残る
ここまで書いてきて、ひとつ思ったことがあります。
いま私たちが買うソフトには、物がありません。
ダウンロードして、アカウントに紐づいて、サブスクが切れたら消える。手元には何も残らない。
でもこのテープは、47年後の机の上に、こうして現物として存在しています。ラベルが日焼けして、値札シールの跡が残って、ケースに傷が入った状態で。
中身が読めるかどうかは、正直わかりません。磁気は抜けているかもしれないし、テープが切れているかもしれない。
それでも「ここにある」ということ自体に、私は価値を感じます。
Alignment Test Toneを聞きながら、ドライバー片手にラジカセのネジを回していた誰か。その人の手つきまで想像できてしまう。モノが残るというのは、そういうことなんだと思います。
こういうものこそ、捨てないでください
古いパソコンを処分されるとき、本体だけ残して付属品を捨ててしまう方がとても多いです。
でも実際のところ、価値が跳ね上がるのは付属品が揃っているときです。カセットテープ、フロッピー、マニュアル、元箱、保証書、販売店のシール。本体より小さくて、本体より捨てられやすくて、本体より残っていないもの。
「こんな古いテープ、どうせゴミやろ」と思われたら、捨てる前に一度ご相談ください。 中身が読めなくても構いません。ラベルが日焼けしていても構いません。
その箱の底に入っているものが、いちばん面白かったりします。
PS、上記のうち各ソフトの由来や時代背景については、調べながら書いた部分も多く、細かいところは正直あやふやです。当時を知っておられる方、間違いがあれば教えてください(店主)
古いAppleの付属品も、まとめて査定します
カセットテープ、フロッピー、マニュアル、元箱。本体と一緒に眠っているものこそご相談ください。大阪・奈良・兵庫で出張査定、全国から郵送も受け付けています。
古いMac・Apple IIを手放すなら
G3以前のMacintoshやApple IIは、動かなくても買取できます。大阪・奈良・兵庫は出張、全国から郵送で受け付けています。
古いMac・旧型Mac買取のページを見る